SES企業の見分け方とコツは?客先常駐の嫌な所と就職前後のポイントまとめ
必要文字数:6,000文字システム開発をしていると、自社開発であったり、客先常駐であったりと様々な働き方があります。その中でもSESのような客先常駐だと、稀に自分が描いたビジョンとは程遠いような働き方を強いられることあります。
そういう私自身も実際にSEとして体験したことがありますが、もう二度と客先常駐はやりたくはありません。
そこで今回は客先常駐(主にSES企業)の見分け方、最後にSES企業の中でもブラック企業の見分け方についても解説していきます。
SES企業と自社開発企業の違いとは
それでは最初にSES企業のような客先常駐は自社開発や受託開発のように自社のオフィスで仕事をするのと比べて何が異なるのかをお話しします。
客先常駐するための面接が案件ごとにある
自社開発や受託開発を行っている企業では、社内で数名~十数名のチームを組み案件を遂行していきます。そのため、例えば新入社員のような経験の浅い人材が入ってきてもサポートしながら人材の能力を向上させることができます。
そして、万が一実力不足だった場合には早い段階で別の案件へアサインしたりと別の方法もすぐに取れます。
一方のSES企業では、派遣されるベンダー企業は他社なので人材の成長をさせるのではなく、案件をスムーズに遂行するための人材を求めているので、その案件ごとに面接が発生します。
面接で通ったら基本的に1月ごとに契約を締結するので1月の間は別の案件に異動したりすることは不可能です。
だからこそ、契約を交わす前にどのような人柄でどれだけの能力を持っているのかを見極めるため面接を行っている企業が多いです。
同じ企業だったり、同じPMの場合は面接無しで契約を締結する場合もあります。
ベンダー企業からの指揮命令によって仕事をする
自社開発や受託開発を行っている企業では、自分の上にPMだったり、上司がいてそこからの指示に対して仕事を行います。
しかしSES企業の場合は先ほどもお話ししましたが、客先常駐でベンダー企業のメンバーとして活動するため、ベンダー企業のPMからの指示に従って仕事をすることになります。
稀にベンダー企業を通り越して、クライアントから指示が飛んでくることがありますが、絶対に断りましょう。
SES企業の契約体系は準委任契約になり、ベンダー企業以外からの指示は違法になります。
客先常駐の嫌な所とは
私も何度も客先常駐をしたことがあります。IT業界の大手から自動車業界の大企業の客先常駐まで行ったことがありますが、そのほとんどで酷い環境だと思ってしまうことが多かったです。
私自身は環境で嫌だと思ってしまいましたが、それ以外にも嫌な点はあります。
自分のテリトリーが無い
自社で開発する企業では、自分用にデスクやPCが容易されます。基本的にそのPCや周辺機器は自分専用になり、それ以外の人が使うことはありません。
自分専用のPCを誰もが使ってしまうとセキュリティリスクになりますので、自分が許可しない限り使わせないようにパスワードを使って守るようにしましょう。
それ以外にも棚や引き出し等、自分の私物を置ける場所はいくつもありますが、客先常駐の場合はほとんどありません。
私が体験した客先常駐全てで長机が使用されていたので、自分専用の引き出しは用意されておらず、バッグすら入らないようなロッカーを一人一つだけ支給されていました。
そういった点でも自分が自由にできる環境が無いことが客先常駐の嫌な点と言えます。
(SESや派遣のみ)何度も面接をしなければならない
私は受託開発で客先常駐を行っていてベンダー側だったので面接は行ったことがありませんが、派遣やSESは最初にもお話ししたようにベンダーとの面接があります。
就職の面接でさえ、体力、精神力を使いますが、その面接を各案件ごとに繰り返さなければいけません。その案件や日程は企業が探して、決めてもらえますが、面接を何度もしなければいけないという点ではかなり面倒だと感じてしまいます。
契約上の最低稼働時間は絶対に厳守しなければならない
これが一番嫌な点になる方も多いでしょう。客先常駐をする際によくある契約として、
基準時間は、下限を140時間、上限を180時間とする。
という文言がありますが、この下限以上は自分の仕事が終わって暇になってもその場にいなければいけません。
ここでは下限を140時間と記載していますが、この下限時間は企業によってまちまちで、160時間の場合もあります。
特別な休み等が無い日であればこの時間に対する取り決めは特に気にすることはありませんが、有給休暇を取得した時やゴールデンウィーク等の長期的な休暇がある場合には下限を下回ってしまうため、毎日数時間残業をして休日を相殺しなければいけません。
自社で開発する企業であれば、1月当たり絶対に〇〇時間働かなければならないという準委任契約ではなく、単純な雇用契約なので仕事が終われば無理な残業はせず、有給休暇を取っても別の日に残業で稼働時間をカバーする必要もありません。
こういった点については、SES企業の最も嫌な点だと言えます。
SES企業を見分けるための4つの判断材料とは
それではここからは、その企業がSES企業なのかどうかを見分けるためには一体何を見ればいいのか、についてお話ししていきます。
これは企業サイトや就職あっせんサイトからでも確認できることなので、SES企業以外に入りたいという方はしっかりとチェックしておくようにしましょう。
就業時間や就業場所が曖昧
SES企業は複数人が複数案件で活動させますので、就業時間や就業場所が一定ではありません。
そのため、よくある記載方法として、
このように記載されている場合、十中八九SES企業でしょう。
自社で開発する企業であれば、勤務地や勤務時間については明確に記載されています。
実際に私が勤務していた企業では下記の通り記載されていました。
このように自社で開発する企業は勤務地や勤務時間は明確に記載されています。この情報は就職あっせんサイトや企業サイトで簡単に見ることができるのでまずはこの項目を確認してみましょう。
雇用契約が曖昧
先ほどお話しした私が以前勤務していた企業では入社し、約3カ月の試用期間がありましたが、その間は形式的には「正社員」、社内では「見習い社員」として扱われていました。
見習社員だからといって、給料は変わるわけではなく正社員の月給が毎月支払われていました。
一方のSES企業では、入社後1カ月~3カ月は契約社員として活動しなければならない場合があります。
これは、企業目線で考えてみると簡単で、SES企業では案件に人材を送ることで売上を得ています。
その企業が受注している案件に採用されなければ売上が出ていないにも関わらず給料を支払わなければならず、その上、いつまでも契約ができなければ損をしてしまうため、1月ごとの契約をし、契約ができないと判断されると雇い止めをされる可能性があります。
年収が比較的低め
SES企業は、案件に対する単価ではなく、人材における単価が売上になります。そしてその売上が上がりにくい業種です。
だからこそ、社員に対しての昇給も微々たるものになり、売上を上げるためには、自分が残業をしたり、能力を見せて単価を上げるしかありません。そういう点において、他の職種と比べて給料が伸びにくい要因にもなっています。
それ以外にも、会社が利益を追求するあまり、給料があまりにも低いことがあります。SEの平均的な年収は20代でも350万円~400万円程度ですが、200万円~300万円程度の年収しかない企業も存在します。
これほど低い年収の企業はSESの中でもほんの一部でブラックの傾向がありますので、もしSES企業に就職する場合であっても選ばないようにしましょう。
自社の社員との交流を重要視している
SES企業はほとんどが客先常駐なので、自社内の社員との交流が一切ありません。そもそもどんな人がいるのかすら分からないようなこともよくあります。
そのため、帰社日を設けていることがありますが、SES企業では、その帰社日を企業の特徴として出していることがあります。
帰社日がある=外にいる(客先常駐)ということですので、SESや派遣を行う企業と想定しておきましょう。
SES=悪いというわけではない
この後に、ブラックなSESを見分けるための判断材料についてお話ししていきますが、先に知っておいてもらいたいのは、SES企業=ブラックというわけではありません。
SES=二次請け三次請けで仕事が多いわりに収入が少ないという企業ばかりではなく、適切な収入で適切な仕事量の案件を受注できる企業も存在します。
そういった企業ほど、自分の思い描いているキャリアプランに近いような案件を探してもらえたり、定期的にサポートをしてもらえたりと働きやすい環境にしてもらうことが可能です。
そのため、SESというと一概に悪いとは考えず、自分のキャリアプランに最短で到達しやすい職種にもなり得ますので、検討してみてはいかがでしょうか?
ブラックなSESを見分ける6つの判断材料とは
一方で、ブラックなSES企業も多く存在しています。
そういった企業は、売上優先で人材をただの使い捨ての道具としか思っていないこともよくあります。
では、そんなブラックなSES企業の見分け方があり、企業サイト等で確認できる「就職前に判断できる材料」と「就職したときにブラックだと判断できる材料」の2つに分けて解説していきます。
就職前の判断材料3選
まずは就職前に判断できる材料をお話ししていきます。
大人数を採用している
まずは若干名などではなく、大量に人材を募集している企業です。
先ほどもお話ししましたが、SES企業の売上は人材が増減に比例します。そのため、中小企業でも何十人も採用する企業があります。
そういった企業は「とにかく契約さえ取って人材を派遣したい」と考える傾向があるので、自分の望むようなキャリアプランには進みづらくなるので注意が必要です。
給料が年俸制
SES企業の中で収入システムが年俸制の場合には要注意です。
年俸制のメリットは年功序列と異なり、成果さえ出せれば1年で数十万円以上年俸が上がる点です。しかし、SESの場合は企業の売上についても前述でお話ししていますが、どれだけ貢献しても得られる売上は時間に対しての固定の売上になってしまいます。
そのため、成果を上げるためには人材単価を上げなければならず、それも相場があるためなかなか上げにくいというデメリットもあります。
だからこそ、年俸制のSES企業ではそもそも年収は上がりにくい傾向があります。
他にも残業代についてみなし残業だったり、残業代は年俸に入っていたりとトラブルの原因にもなりかねないので、SESで年俸制の企業は避けるのが得策でしょう。
取引先が知らない企業ばかり
次に取引先です。企業サイトや就職あっせんサイトでも取引先については明記されていますが、一次請けのベンダーなどであれば、聞いたことがあるような大きな企業が列挙されていることが多いです。
しかし、SESの場合取引(契約)するのはベンダーなので、例えばこのような企業が多くなります。
システム開発系の企業は「システム」という単語を使う傾向があるので、このような企業が多い場合にはSES企業の可能性が高く、更に、知らない企業ばかりの場合は一次請け以下、二次請け三次請けになっている場合もあります。
そうなると、自分の収入も低くなってしまいがちなので注意しましょう。
悪質なSESの場合、取引先にクライアント企業の名称を使うこともあります。
そういう場合、騙されかねないのでこれまでにお話しした判断材料でブラックなSES企業なのかを判断しましょう。
就職後の判断材料3選
次に就職後の判断材料です。これも3つの項目お話ししていきます。
面接に使う履歴書やエントリーシートが嘘だらけ
これはいわゆる経歴詐称です。SESの場合、案件に参画するためにはPMとの面接をしなければいけませんが、そこで見せる履歴書やエントリーシートに嘘が書かれていることがあります。
自分で記載せずにSES企業の人が記載することがあり、そこで2年間知らない案件に参画しているようになっていたということもよくあります。
残念ながらこの履歴書やエントリーシートの真偽を見分ける方法はほとんどありません。
経歴詐称している状態で参画してしまうと、自分の実力では無理な要求をされたり、不当な評価を受けることもあり、自分の評価を勝手に下げられる要因になりますのでそういった企業はブラック企業だと言えます。
休みが取りづらい
ベンダーに派遣されているとはいえ、SES企業に勤めている労働者です。
労働者は労働基準法により、一定の休日を確保することを権利として有しています。その中でも取得しにくい休暇として有給休暇があります。
これは一般企業でも取得しにくいと言われていますが、SESの場合には所属しているSES企業と派遣されているベンダー企業の2社と調整しなければならず自分一人では法定休日以外の休日を取得するのはかなり難易度が高いです。
しかしホワイトなSES企業であれば、SES企業の営業などからも交渉してもらえることもあり、比較的有給は取得しやすい傾向があります。
有給が取りづらい企業だと感じたときにはそれはブラック企業かもしれませんので注意しましょう。
上司の質が悪い
これはSES企業だけではなく、どんな業種、職種でも関係しています。
SESの場合は指示をする方が上司となりますので、その方次第で仕事の快適さが遥かに変わります。
どのような上司が質が悪いかというと、
- コミュニケーションができない
- 部下(自分)に対して責任転嫁する
- 話が二転三転する
- えこひいきをする
- あり得ない要求をする
このような上司は総じて悪い上司になりかねません。
仕事上で問題が無ければそれでいいかもしれませんが、精神衛生上気持ちいいものではありませんので、このような上司に当たってしまい、どうしようもなければ、最短で案件を変えてもらうか、転職を考えたほうがいいでしょう。
見るところを見ればSESなのかの見分け方は簡単。しかし中身が重要!
ここまで、自社で開発する企業とSES企業の見分け方、ブラックなSES企業の見分け方について解説してきましたが如何だったんでしょうか?
社員が潰れてしまう要因としては案件ではなく、上司やメンバーによる影響がかなり大きくなりがちです。
そもそもPMがしっかりしていればどんな案件でもホワイトな案件になり、何の問題もなく業務を遂行することができます。
社内で開発する企業に入りたいからと言ってここでお話ししたSES企業との見分け方を活用しても最後にお話しした上司が問題であれば、SES企業と比べて遥かにストレスが貯まってしまい最悪の場合、潰れてしまいます。
結局は何かトラブルが起きたときにどのように対処できるのかが重要になります。
案件が問題であれば、その原因を解消できるような行動を取ったり、上司が問題であればその上司から離れられるような交渉をしたり。
結局は自分自身で行動をしなければ仕事がしやすい企業にはなり得ませんので注意するようにしましょう!