なぜSESはブラックなの?ブラック企業の特徴と見分け方とは
SESとインターネットで検索すると、「ブラック」「辛い」「地獄」などといった類似検索ワードがたくさん出てきます。
ではどうしてSESはそこまでマイナスなイメージを持たれているのでしょうか?
それはSESの労働形態に大きな問題があるからにほかなりません。
SESの場合には多重下請け構造であるIT業界ならではの闇や、常駐先での人間トラブルなどさまざまな理由からブラックな環境なのではというイメージを持たれています。
しかし反対にエンジニアが働きやすい環境を整えているホワイト企業もたくさんあります。
今回はそんなSESについてブラックといわれる理由、ブラックSES企業の特徴や見分け方について詳しく解説していきます。
もちろん、全てのSES企業がブラック企業であるわけではありませんので、ホワイト企業との見分け方やSESに向いているエンジニアについても合わせて解説していきます。
SESとはそもそも何?
SESとは「System Engineering Service」の頭文字を取った言葉で、エンジニアサービスを常駐先に提供する労働体系となります。
システムエンジニアリングサービス契約とは、システムエンジニアが行うシステム開発等に関する、委託契約の一種で、システムエンジニアの能力を契約の対象とするものである。
ウィキペディア「システムエンジニアリングサービス契約」
日本語では客先常駐と呼ばれることが一般的です。
SESの場合、常駐先の企業でエンジニアとして勤務することが一般的な働き方です。
また、SESの場合には成果物に対する報酬ではなく、働いた労働時間に対する報酬となります。
そのため納品や成果物に対する保証はありません。
よく聞くエンジニアの他の働き方として自社開発があります。
自社開発の場合には自社でサービスの企画から開発、アフターサポートまでを担当するのに対し、SESの場合には開発やテストなどの1部の部門のみを担当することが一般的です。
そしてもちろん自社開発の場合には自社の製品の納期や成果物に対する責任は発生しますが、SESの場合には常駐先にエンジニアとしての労働力を提供するだけになるためそうした成果物に対する責任は発生しないのです。
なぜSESはブラックと呼ばれている?
SESがブラックと呼ばれるのにはさまざまな理由があります。
先ほどご紹介した通り、SES契約の場合には業務命令指示を出すのはSES企業となっているはずですが、実際のところは現場のエンジニアがこのことを理解しておらず、常駐先から業務命令を受けていることもあります。
もちろんこれは契約違反となるのですが、こうした契約と実際の業務でのアンマッチが起こりやすくなっているためブラックな労働環境が生まれやすくなっているといっても過言ではありません。
ここではSESがブラックと呼ばれる理由の中でも特に特徴的なものを4つご紹介します。
1.残業や休日出勤が起こりやすい
業務指示命令はSES企業からエンジニアに対しておこなうことが契約で明記されていると何度もご説明してきました。
しかしながらそうしたことをエンジニアや常駐先が理解していないため、常駐先から残業や休日出勤などを命じられるケースもあります。
しかし、これは契約違反ではあるものの、SES企業にとってみればエンジニアに働いてもらえば働いてもらうほど利益を上げることができるため、放置しているケースもあります。
また、SES企業によってはあえて労働条件をあいまいに決めているといったこともあります。
労働条件をあいまいに決めることによって常駐先の状況に応じて残業や休日出勤を命じることができるようにしていることもあります。
こうした労働環境に関する取り決めからSESはブラックであると呼ばれることがあるのです。
2.スキルアップできる環境でないこともある
一般的なSES企業はエンジニアと定期的に面談をおこない、エンジニアの適性に応じた常駐先・プロジェクトにアサインすることが一般的です。
しかし、エンジニア自身が面談でうまく自分の適性を伝えることができない場合や、そもそも面談がおこなわれないために、エンジニアにとってスキルアップできる常駐先に出向できないというケースもあります。
自分の得意分野やスキルアップしたい常駐先ではないのに、数か月から数年同じ常駐先で働くというのはどれほどのストレスを感じるかはお分かりいただけることでしょう。
また、SES会社は営業担当者が常駐先を探してくることになるため、営業担当者が優秀でない場合にはそもそも好待遇の常駐先やスキルアップできる常駐先を獲得することさえできないということも考えられます。
このようなスキルアップできるかどうかが会社によって判断されてしまう点が、SESはブラックであると呼ばれる理由の1つになっています。
3.下請企業の待遇が低くなりがち
IT業界は1つの案件を2次請け、3次請け・・・という風に下請けに流す多重下請け構造になっているため、同じ案件の仕事をする場合であっても下流の企業になればなるほど利益が少なくなっていきます。
会社にとっての利益が少なければそれだけエンジニアに支払われる給与も少なくなります。
上流SES企業に所属して仕事を請け負うエンジニアと下流SES企業に所属して仕事を請け負うエンジニアでは、たとえ同じ業務をしていたとしても報酬に差が出てしまうという現象が発生してしまいます。
このように所属する会社の位置によって報酬に差が出ること、エンジニアが買いたたかれてしまうことがあり得るためブラックだと呼ばれることもあります。
4.常駐先の環境が劣悪である
SESエンジニアの場合には基本的にはプロジェクトごとに常駐先が異なり、勤務場所も異なることになります。
常駐先によっては開発環境が最新でない場合や常駐先の人間トラブルに巻き込まれてしまうなど労働環境が好ましくない場合もあります。
ある程度常駐先に出向する前に常駐先の情報を収集することはできますが、実際のところは出向して仕事を始めてみないとどんな環境であるかはわかりません。
開発環境が古いと新しい技術が使えないことが多く、常駐先の人間トラブルに巻き込まれてしまうと精神的なストレスを抱えてしまうことになります。
また最悪の場合には新人の期間に一人で常駐先に出向されてしまい、何をしたらいいのかもわからずただ常駐先から指示があるまで時間をつぶすだけになってしまうというケースもあります。
このようにプロジェクトによって労働環境が変わることや、いわゆる外れプロジェクトに配属されるリスクがあることからSESはブラックと呼ばれることがあるのです。
ブラックSES企業の特徴
SESは契約上、ブラックな労働環境が生まれやすいということはご理解いただけたことと思います。
もちろん労働環境だけではなく、SES企業の中にもブラック企業と呼ばれるものが存在しているのも事実です。
ここではSES企業に就職する際に注目したいブラック企業の特徴をご紹介します。
紹介する特徴に当てはまる企業の場合には、働くことを慎重に検討することをおすすめします。
1.会社が下請け構造の中で下流に位置している
IT業界は多重下請け構造であるため、末端に位置してしまえばそれだけ利益が少なくなることは先ほどもご紹介しました。
特に取引先がSES企業ばかりである企業や、社員数のわりにオフィスが小さすぎる企業などは注意した方がいいです。
下流に位置している会社の場合には簡単な仕事しか獲得することができず、スキルアップすることもあまり望めないでしょう。
場合によってはエンジニア業務だけではなく、電話対応や書類整理などの雑用を命じられてしまうこともあり、モチベーションが保てなくなってしまうことも考えられます。
また、それだけならいいのですが業務内容のわりに給与が低すぎるケースもあるので注意が必要です。
同じSES企業でも2次請け程度であればそこまで労働環境が悪いこともありませんので、SES企業を探す場合には多重下請け構造の中でどのあたりに位置している企業なのかは確認しておくことをおすすめします。
2.従業員の平均年齢が若い
従業員の平均年齢が若い場合には注意が必要です。
もちろん若手が中心となっており、活気のある企業である可能性もありますが、平均年齢が若い企業の場合には離職率が高く従業員の出入りが激しいという可能性もあるからです。
また、平均年齢が若いために中堅やベテランの従業員が少なく、長期間働くことができない何かしらの理由がある企業である可能性もあります。
中堅やベテランのエンジニアが所属していない場合には、しっかりとした教育体制やフォローアップの体制が企業として整っていないことも考えられますので、スキルアップできる環境でないことも多いです。
また平均年齢が若いため、低賃金で安く利用することができる未経験のエンジニアばかりを集めている企業であることも考えられます。
平均年齢が若いことはデメリットばかりではないですが、今回ご紹介したようなデメリットを抱えている可能性もあるので注意が必要です。
3.SESのみしか事業がない
SESによってエンジニアを常駐先に出向させることのみをメインの事業としている場合には注意が必要です。
SES企業の中にはSES事業と自社開発事業の2つをおこなっている企業もあります。
こうした企業の場合には自社開発をするための開発費を捻出することができているため、経営状態も安定しており社内にエンジニアとしてのスキルが豊富にあることが多いです。
反対にSES事業のみをおこなっている企業や、過去に自社開発をしていた事例のみを全面に押し出している企業の場合には自社開発をおこなえるだけの開発費用や人員を確保することができないために経営的に問題があることも考えられます。
総じてSESの仕事ばかりやっているために、社内には技術が溜まることがなくエンジニアの技術力も低いことがあり、スキルアップできる環境が整えられていないことも考えられます。
SES企業を探す場合にはSESと自社開発の比率を確認し、エンジニアとしてどのようなキャリアを歩んでいくことができるのかを確認することをおすすめします。
4.評価制度があいまい
SESの場合には特に社内評価があいまいになりがちです。
というのも常駐先によって担当する業務がエンジニアごとに異なるために、評価基準を決めることが難しいという理由があるからです。
しかしながら優良な企業であればあるほど、評価制度を充実させることによって従業員に対して報酬を還元していくことが当たり前です。
評価基準を作ることが難しいからという理由で評価制度をあいまいに設定している企業の場合にはブラックである可能性が高いです。
評価制度があいまいである企業の場合には、自社の従業員を大切にしていない可能性も考えられます。
そのため常駐先と結ぶ契約もエンジニアのことを考えたものではなく、SES企業の利益を最大限得るためのものであることも考えられますので、劣悪な環境で働かされることも多いかもしれません。
評価制度についてはなかなか入社前に確認することは難しいですが、面接の際にエンジニアの評価基準について詳細に教えていただけるかどうかを確認しておくことをおすすめします。
ホワイトSES企業の見分け方
ここまではブラックSES企業について特徴をご紹介してきました。
ではホワイトSES企業はどのように見分ければいいのでしょうか?
ここではホワイトSES企業を見分けるために注目したいポイントを3つご紹介していきます。
1.エンジニアの待遇を確認する
まずはエンジニアとしての待遇を確認することが重要です。
特に確認したい項目は以下の4点になります。
従業員の定着率
離職率が低く、従業員が長く勤務している企業の場合にはエンジニアにとって働きやすい労働環境が整えられているという証拠になります。
定着率については面接をする際に必ず確認することをおすすめします。
従業員の定着率についてあいまいな回答をされる場合には、従業員の平均年齢を質問してみるといいでしょう。
若手と中堅、ベテランのエンジニアがバランスよく活躍している企業の場合には、従業員の平均年齢は高くなる傾向にあります。
評価制度
先ほどもご紹介した通り、評価制度は必ず確認するようにしましょう。
ホワイトSES企業の場合には、評価や昇給の指標が公平です。
SES企業の面接では必ず評価制度や昇給回数については確認しておきましょう。
反対に面接時にあいまいに回答される場合や、入社して昇給が見込めない場合には社員を大切に思っていない企業である可能性が高まります。
評価制度がしっかりとしていない企業の場合には、スキルアップできる環境が整えられていないケースや社内にしっかりとした技術力が蓄積されていないことも考えられますので、成長することが難しいことが多いです。
福利厚生の充実
残業代や交通費の支給はもちろんですが、それらにプラスして各種手当がどれだけもらえるのかを確認しておくといいでしょう。
例えば資格を取る際の補助はあるのか、住宅手当はあるのか、書籍を購入するときに補助は出るのかなど福利厚生は企業ごとに異なります。
大手企業やホワイトSES企業ほど、こうした独自の福利厚生が充実していることが多いため、面接の際には福利厚生についてしっかりと確認することをおすすめします。
反対にSES企業が常駐先に配慮して、エンジニアにサービス残業を求めることや、交通費の支給に上限を設けていることもあります。
2.取引先を確認する
SESの場合、いい労働環境やスキルアップすることができる常駐先を得られるかどうかはSES企業の営業力に左右されます。
そんな営業力を客観的に判断する材料として、SES企業の取引先を確認するという方法があります。
高い営業力を持っているSES企業の場合には、エンドユーザーもしくはSIer(元請企業)と直接取引があることが多いです。
一般的に多くのSES企業の場合には同業他社を取引先としてHPなどに記載していることがほとんどです。
それはどのSES企業もエンジニアの労働力を求めているため、そこまで苦労することなくプロジェクトを受注することができるからにほかなりません。
エンドユーザーやSIerと直接取引がある場合には、IT業界特有の多重下請け構造から脱却することができるため、中間マージンが発生することなく、会社にまとまった利益を生むことが可能です。
会社がたくさん利益を上げることができるということは、それだけエンジニアに還元されるということにも繋がります。
求人を探す場合には、求人広告やHPなどでエンドユーザーやSIerとの直接取引があるかどうかを確認することをおすすめします。
3.技術力を確認する
技術力を外から判断することはなかなか難しいですが、SES企業が自社開発をおこなっているかどうかによってある程度の技術力を確認することは可能です。
一般的にSESの場合、エンジニアを常駐先で働かせるだけで利益を上げることができるため、コストも最低限にしてビジネスをおこなうことができるというメリットがあります。
そのためSES事業のみをおこなっている企業の場合には、常に従業員が常駐先で勤務しているため、社内に技術力が溜まりにくい特徴があります。
反対に自社開発の場合、開発費や人件費、設備投資費などさまざまなコストがかかります。
それだけのコストがかかるのにも関わらず、現在進行形で自社開発をおこなっている企業の場合にはそれだけ投資することができる人材や金銭的な余裕があることを示しています。
また、現在進行形で自社開発をおこなっている企業の場合には製品が売れ続けているという特徴があります。
これだけ世の中にシステムやアプリケーションが溢れた現代で安定した売上を上げられるということは、それだけ同業他社と比較しても技術力に自信があることの現れでもあります。
そして何より自社開発をおこなっている企業の場合には開発だけではなく、企画立案やマーケティング、アフターサポートまで幅広い分野の業務を担当していることがほとんどです。
そのためエンジニアとしてのキャリアだけではなく、マーケティングなどの分野にもチャレンジすることができる環境が整っているといえるため、幅広いキャリアプランを描くことが可能です。
一点注意しなければいけないのは、過去の自社開発実績をアピールしている場合です。
現在も開発をおこなっていないということは、売上を上げられなかった=競合他社に技術力で負けてしまったなどという理由があります。
SES事業だけではなく、過去に自社開発もおこなっていたことを過度にアピールしている企業には注意をする必要があります。
4.社長はエンジニア出身かどうか
社長がエンジニア出身者である場合には、エンジニアとしての苦労や大変さを理解してくれるため、労働環境がそこまで劣悪にならないことを期待することができます。
そのためSES企業として問題になりやすい評価制度をしっかりと公平に制定していることや、設備投資や福利厚生などエンジニアがより働きやすい環境を整えてくれることも多いです。
SESの場合には従業員がそれぞれの常駐先で働くために、社内の人と顔を合わせないこともあり、社内で情報共有がしづらいことも多々あります。
エンジニア出身の社長の場合にはこうした部分に配慮して、ベテランのエンジニアに新人がしっかりと相談できる環境や社内教育の充実をはかっていることもあります。
また、社長のエンジニア時代のコネクションによって労働環境に恵まれている常駐先やプロジェクトを継続的に受注しているケースもあります。
何よりもエンジニアとしての苦労や大変さを理解して、エンジニアにできるだけ還元したいと考えることがエンジニア出身の社長には多い傾向がありますので、1つの指針にしてみるといいでしょう。
エンジニアがSESを利用するメリット
企業によってブラックかホワイトかが明確に分かれてしまうSESをエンジニアが利用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
一見すると辛く厳しい環境で働くことになりそうなSESですが、もちろんSESをエンジニアが経験することにはたくさんのメリットがあります。
ここではエンジニアがSESを利用するメリットについて、代表的なものを7つご紹介します。
1.幅広い分野で活躍することができる
SESの場合には、プロジェクトによってさまざまな業種に携わることができます。
そのため業界特有の専門知識をプロジェクトごとに習得することができます。
また、プロジェクトごとに使用するプログラミング言語も異なることもあり、IT技術の面でも幅広くスキルアップをすることが期待できます。
多くのSES企業ではエンジニアの特性やキャリアプランに合ったプロジェクトに面談の上参画させてもらうことが一般的であるため、スキルアップもしやすい傾向があります。
まずはたくさんの業種を経験してみて、その中から自分に適応した業界に特化したエンジニアになるなど、自分に合わせたキャリアプランを描きやすいメリットもあります。
2.他社のエンジニアと交流を深めることができる
大きなプロジェクトの場合には複数のSES企業からエンジニアが派遣されることもあります。
そのため常駐先では他社のエンジニアと交流を深めることができるのもSESならではのメリットの1つです。
エンジニア同士の最新技術などに関する情報を共有することができるのは、仕事に対するモチベーションアップにも繋がることでしょう。
また、プロジェクトによってはフリーランスエンジニアの方が参画しているケースもあります。
SESを経験した後にフリーランスエンジニアとして活動していきたい夢をお持ちの方の場合には、フリーランスエンジニアとして活動するためにはどのようなスキルや経験が必要なのかを直接質問することができる環境もSESならではのメリットです。
3.初心者でも正社員になりやすい
SESの場合には他のエンジニアと比較すると正社員として採用されることが多いところもメリットの1つです。
自社開発の場合にはエンジニアとして求められるスキルセットが高い傾向がありますが、SESの場合にはそこまで高いスキルセットを要求されることは少ないです。
そのため業界未経験の方や新卒の方であっても常駐先でエンジニアとして活躍できるチャンスが多いです。
仕事をしながらスキルアップや経験を積むことができますので、これからIT業界にチャレンジしたい方には正社員として登用される可能性の高いSESエンジニアを目指すことをおすすめします。
4.大企業や有名企業で働くこともできる
プロジェクトによっては大企業や有名企業で働くこともあります。
大企業や有名企業の方とコネクションを作ることができますので、常駐先である程度エンジニアとしてのスキルが認められればヘッドハンティングされることや転職の相談にのってもらうこともできるでしょう。
何よりも簡単には入社することができない大企業や有名企業で働くチャンスがあるということがSESならではのメリットでしょう。
5.残業時間や休日出勤が少ないことが多い
一般的なSES企業の場合にはエンジニアを出向する前に労働環境についての契約を結ぶことになります。
そのため事前の契約内容に残業時間や休日出勤に関する取り決めをされていることが多く、過度な残業や休日出勤は発生しにくく、仕事もプライベートもメリハリをつけて過ごすことができます。
SESエンジニアの場合には成果物に対する対価ではなく、労働時間に対する対価として報酬が支払われるため、納期に間に合わないために徹夜で残業するといったことも起こりえません。
しかし、SES企業によってはエンジニアを働かせれば働かせるほど利益を上げることができますので、出向前に常駐先と結ぶ契約をあいまいにしているケースもありますので注意が必要です。
6.プロジェクトごとに勤務地が変更になる
一般的な企業の場合には転勤や異動がなければ、勤務地が変更することはありません。
しかしながらSESの場合には数か月から年単位でプロジェクトが変更になることが多く、その都度自分の勤務地も変更になります。
1つの場所で落ち着いて仕事をしたいという方にはストレスに感じてしまうかもしれません。
一方で常駐先のストレスによっては勤務地が変更になることはエンジニアにとっては嬉しいかぎりです。
1つの場所にとどまっていたくない、いろいろな環境で働いてみたいという方には特にSESはおすすめします。
7.計画的にスキルアップできる可能性が高い
SESエンジニアの場合には、エンジニアごとの適性やスキルに応じてプロジェクトを決めることが一般的です。
そのため所属しているSES企業との面談を通して、自分がどういったキャリアプランを描いているのか、どのような業界に興味があるのかなどを自分自身のことをしっかりと伝えることによって計画的にスキルアップをすることができます。
反対になかなか自分のやりたいことを伝えられない方や、そもそも定期的にエンジニアと面談をおこなわないSES企業の場合はスキルアップが見込めないことも多いですが、多くのSES企業の場合には着実にスキルアップをしていくチャンスがたくさんある点もSESエンジニアとして働くメリットの1つであるでしょう。
SESを利用した方が良いエンジニアはどんな人?
では実際にどのような方がSESエンジニアに向いているのでしょうか?
ここではSESエンジニアに向いている人の特徴を6つご紹介します。
1.コミュニケーションスキルが高い方
SESの場合にはプロジェクトごとに常駐先が変わるため、常駐先の方と上手くコミュニケーションを取ることが求められます。
どうしてもエンジニアと聞くと技術が大切だと思われがちですが、技術よりもコミュニケーション能力が高い方がうまく仕事を進めていくことができます。
そのため人と話すことに抵抗がない方や、人見知りしない方の場合には楽しく仕事をすることができるでしょう。
反対に何か不明なことがあった場合でも、緊張して話しかけられない、質問できないという場合にはSESエンジニアには向いていないかもしれません。
より多くの方と関わりながらスキルアップしていきたい、大きなプロジェクトを大人数で進めていきたいなどと考えている方はSESエンジニアに向いているといえるでしょう。
2.環境に臨機応変に対応できる方
SESエンジニアはプロジェクトによって勤務地も一緒に働く方も都度都度変化します。
そのため1つのやり方にとらわれずに、常駐先ごとのルールや自分の役割に臨機応変に対応できる方はSESエンジニアが向いているといえます。
例えば同じ業界、業種の常駐先にエンジニアとして派遣された場合であっても企業ごとに運用が異なる点や、製品やサービスの特徴が異なることもあり、いろいろなアプローチを求められることもあります。
1つのやり方を正解と考えるのではなく、さまざまな角度から物事を臨機応変に対応できる方はSESエンジニアとして活躍することができるでしょう。
3.未経験からIT業界にチャレンジしたい方
SESエンジニアの場合には未経験からでも着実にスキルアップすることができるので、経験に関係なくチャレンジしやすいといえます。
今後もますますエンジニアの需要は増加していくことが予想されている一方で、少子高齢化の影響もあってIT人材は今後も不足していくだろうとされています。
そうした面からも経験問わず、SESエンジニアを採用している企業がたくさんあるのです。
SESエンジニアが担当する業務には簡単なテスト業務からプロジェクト管理などといった大きなことまで多くの種類があります。
未経験であったとしても、最初はテストからコツコツとプログラミングに関する知識をつけていき、ゆくゆくはプロジェクト管理をするリーダーの役割を担うなど着実にステップアップすることができます。
4.正社員として働きたい方
求められるスキルが自社開発などを担っている他のエンジニアと比較するとSESエンジニアの場合には低いことが多く、IT業界未経験者やパートやアルバイトしか経験がない方であっても正社員として登用する企業は多くあります。
2030年にはIT業界で79万人ほどのIT人材が不足すると言われている通り、IT業界は現在売り手市場であるといえます。
2015 年試算によれば、IT 需要が今後拡大する一方で、我が国の労働人口(特に若年人
IT 人材需給に関する調査
口)は減少が見込まれ、IT 人材の需給ギャップは 2030 年には約 79 万人に拡大すること
が示されている。
またエンジニアは今後も需要がなくなることはなく、未来も明るい職業であるので、キャリアチェンジを考える方や学歴や職歴がない方には特におすすめしたい職業になります。
5.業務内容に強いこだわりがない方
SESの場合にはどんなプロジェクトに参画することができるかは、SES企業の営業力にかかっています。
そのため自分のスキルアップにはあまり役に立たないプロジェクトに参画することも少なくないでしょう。
またあまりにスキルアップをしたいなどという上昇志向が強い場合には、業務と自分の理想のギャップによって、モチベーションが保てなくなることも考えられます。
あくまでもSESエンジニアは自分自身で常駐先を決めることはできないため、自分のキャリアやスキルアップに関係ないプロジェクトに参画した場合であっても不満に思うことなく、前向きに考えられる方の方がSESエンジニアに向いているといえるでしょう。
6.一人で常駐先に出向くことに抵抗がない方
プロジェクトによっては大人数で参画するものもあれば、小規模の場合には1人で常駐先に出向することもあります。
一人で常駐先に出向すると技術面や精神面でサポートを受けることが難しくなります。
そのためサポートが受けられないことがストレスとなってしまい、パフォーマンスが低下してしまう方もいらっしゃることでしょう。
技術面や精神面でのサポートがなくとも問題なく常駐先に出向することができる方の場合には、SESエンジニアに向いているといえます。
反対に相談相手がいない、所属しているSES企業の従業員がいなければ不安と感じる方の場合にはSESエンジニアとしての適性はそこまで高くないといえるでしょう。
SESのブラックについてまとめ
今回はSESがブラックと呼ばれることについて、そもそもなぜブラックと呼ばれるのか、ブラックSES企業の特徴からホワイトSES企業とブラックSES企業の違い、SESエンジニアになるメリット、SESエンジニアに向いている人まで幅広くご紹介してきました。
SESの場合、IT業界が多重下請け構造であるためにSES企業の立ち位置によっては中間マージンをたくさん撮られてしまいエンジニアに還元する報酬が少なくなることや、プロジェクトによっては常駐先の人間トラブルに巻き込まれてしまう恐れがあるなどブラックと呼ばれてしまう要因はたくさんあります。
しかしながらSES企業すべてがブラックであるわけではなく、ホワイトなSES企業もたくさんあることも事実です。
SESエンジニアは未経験者であってもチャレンジしやすく、正社員としてエンジニアになることができるのでこれからIT業界に進みたいという方には強くおすすめしたい職業になります。
SES企業を選ぶ際には、ホワイトSES企業とブラックSES企業の違いでもご紹介した通り、評価制度がしっかりとしている企業であるか、自社開発はおこなっているか、社員の定着率は高いか、福利厚生はしっかりとしているかについてしっかりと確認することをおすすめします。
同じSES企業であっても入社する企業を間違えてしまうと辛く厳しい時間を過ごすことになりますので、ぜひ企業選びで失敗しないように今回の記事を参考にしてみてください。