【比較表付】SESとSierの違いとは?結局将来性等を含めてどっちがいいの?
今では仕事をする上で何かしらのシステムやアプリケーションを活用することが当たり前になりました。
そのため現代では、システムやアプリケーションを開発するためにエンジニアを目指す方も増加しています。
しかしながらエンジニアの働き方にはさまざまな種類があり、どういった働き方が自分には合っているのかわからないという方もいらっしゃることでしょう。
今回は数あるエンジニアの働き方の中から最近耳にする機会が増えたSESとSierの2つの違い、将来性などについて詳しく解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして自分にはSES、Sierのどちらが合っているのかをご確認ください。
SESとは
SESとはSystem Engineering Service の頭文字を取ったものであり、クライアントのもとに出向してエンジニアサービスを提供する働き方になります。
システムやアプリケーションの設計から運用保守に至るまで参画するプロジェクトによって担当業務が変化するのもSESの特徴の1つです。
プロジェクトの中には要件定義などの上流工程の業務を担当する機会もあり、エンジニアとしての幅広い経験やスキルが身につく働き方になります。
Sierとの大きな違いはSESはエンジニアとしての労働力を提供するという点にあります。
そのためSESの報酬の対価となるものはシステムやアプリケーションなどの成果物ではなく、エンジニアの労働ということになります。
ここでは簡単にSESの特徴について企業側、エンジニア側それぞれ3つずつご紹介していきます。
企業側
1.採用・教育コストをかけずに即戦力のエンジニアと契約できる
エンジニアを採用するとなると、どうしてもコストがかかってしまいます。
そして採用した後も教育コストが発生します。
これらは仕方のないことですが、最悪の場合にはエンジニアが採用時の期待に応えることなく退職してしまうリスクもあるため、投資したコストが無駄になってしまうというケースも十分に考えられます。
しかしながらこうした企業側のリスクを最小限にすることができるのが、SESになります。
SESの場合には企業のニーズに応じたエンジニアをSES企業から派遣してもらえるため、即戦力として期待できるエンジニアが採用・教育コストなく業務に従事してくれます。
2.事業拡大・事業縮小にも柔軟に対応できる
SESの場合には企業のニーズに合わせてエンジニアと契約することや、契約を解除することができます。
そのため必要に応じてエンジニアを増員することも、事業縮小に応じてエンジニアを減員することもでき、目まぐるしく変化するビジネススピードに柔軟に対応することができます。
どうしても日本の場合には正社員を簡単に解約することができないため、多くの企業にとってメリットがあるといえます。
3.仕様変更にも柔軟に対応できる
Sierの場合には請負契約を結ぶため、仕様変更をする際には別途費用がかかってしまうこともあります。
どうしてもシステムやアプリケーションを開発していくと、要件定義当初から仕様を変更したいと考えることも多いです。
請負契約の場合にはどうしても成果物を納品する納期があるため、仕様変更には柔軟に対応することができないというデメリットがあります。
しかし反対にSESエンジニアと契約している場合には、エンジニアとしての労働力を提供してもらっているだけですので、急な仕様変更であっても柔軟に対応することが可能です。
こうした柔軟な対応をすることができることから企業にとってはSESを利用する価値があるといえます。
エンジニア側
1.残業や休日出勤が少ない
SESの場合にはクライアント先に出向する前にSES企業がクライアントとエンジニアの働き方について契約を交わすことが一般的です。
働き方の契約の中には残業や休日出勤についても細かく決められていることがほとんどであり、突発的な残業や休日出勤は発生しにくくなっています。
SESの場合には準委任契約と呼ばれる契約をクライアントとSES企業が締結することになります。
準委任契約の場合にはエンジニアに対しての業務命令権はSES企業に帰属することになります。
そのためクライアントからエンジニアに対して残業や休日出勤を命じることはそもそも契約違反となるため、おこなうことができません。
また、SESの報酬の対象はエンジニアの労働力であるため、システムやアプリケーションなどの成果物に対しての責任を負う必要がありません。
結果として残業をさせてまで成果物を納期に間に合わせるという必要、責任をエンジニアが負う必要もないため、仕事とプライベートのどちらも充実した生活を送ることができます。
しかし注意をしなければいけないのは、SES企業がブラックである可能性もある点です。
SESは成果物に対しての責任を負わないため、SES企業としてはエンジニアをクライアント先で働かせれば働かせるほど利益を上げることが可能です。
そのため、わざと残業や休日出勤に関して契約上はあいまいにしておいて、クライアントのニーズに応じてエンジニアを働かせることができるような契約を締結するSES企業もあります。
SES企業を選ぶ際にはエンジニアの働き方に関してクライアントとどのように契約を締結しているのかを確認しておくことをおすすめします。
2.幅広い人脈が作れる
SESの場合には参画するプロジェクトごとにクライアント先、勤務場所が変更になることが一般的です。
参画するプロジェクトによってはクライアント先の社員の方と仲良くなれることはもちろんのこと、他社のエンジニアの方と交流を深めるチャンスもあります。
他社のエンジニア以外であってもフリーランスエンジニアの方が参画されるプロジェクトもあるため、SESエンジニアを経験した後にフリーランスエンジニアとして活躍することを考えている方の場合には、現役フリーランスエンジニアからアドバイスを頂けることもあるかもしれません。
加えてクライアント先での仕事ぶりが評価されれば、ヘッドハンティングや転職に関する相談にのってくれることもあるでしょう。
どちらの場合にしてもたくさんの人と幅広い人脈を形成することができるのがSESの特徴です。
3.さまざまな業種・プログラミングの経験ができる
SESの場合には参画するプロジェクトによって業種も異なり、使用するプログラミング言語も異なることが多いです。
そのためさまざまな業種を経験することによって、それぞれの業界での業務知識や生きたプログラミングのスキルを習得することができます。
ある程度経験を積んだ後は自分の得意な業界に特化したエンジニアになるなど、将来のキャリアプランも描きやすい特徴があります。
しかしながらSESの場合にはエンジニアがプロジェクトを選ぶことができず、基本的にはエンジニアの特性や将来のキャリアプランに応じてプロジェクトにアサインされることが一般的です。
自分の特性やキャリアプランをうまく伝えることができない場合には優良な案件にアサインされないケースもあるので注意が必要ですが、さまざまな業種を経験することができるのはSESならではのメリットであるといえるでしょう。
Sierとは
SierとはSiに〜する人という意味を持つerをつけた言葉であり、システムインテグレーターのことを意味します。
つまりSierとは顧客の課題解決の手段としてシステムを企画、開発、その後の保守運用まで一貫して請け負う企業のことを指します。
Sierの社内にはエンジニア、プログラマーなどが多数在籍していることがほとんどで、自社で受注した案件の開発に携わります。
Sierの場合には企業ごとに得意としている分野や業界があることが多いので、1つの分野に特化したシステムやアプリケーションを開発することになります。
またSierには3つの分類があります。
Sierの種類
1.メーカー系
メーカー系とは、パソコンやネットワークなどのIT関連機器を製造・販売しているメーカー系列に位置しているSierのことを指します。
イメージとしては各企業の情報システム部やハードウェア開発部が大きくなり、親会社から独立した形が近いです。
そのため所属しているメーカーに準拠したシステムを開発することがメインになります。
要件定義等の上流工程の作業は基本的には親会社がおこなうことになり、自社では主に開発・保守運用を担当するケースがほとんどです。
2.ユーザー系
ユーザー系とはハードウェアメーカー以外の一般企業が親会社となっているSierのことを意味します。
有名な親会社の業種でいうと、金融系や商社が多いです。
商社のユーザー系Sierの場合には親会社の商流を活用して幅広い業界にシステムやアプリケーションを導入していくことになります。
ユーザー系の場合にもメーカー系と同じように要件定義などの上流工程の作業は親会社が担当することが多いです。
3.独立系
独立系とは、メーカー系やユーザー系のような母体を持たない独立したSierのことを意味します。
そのため要件定義を始めとした上流工程の作業から開発、保守運用まで一貫して自社で担当していることが多いです。
母体に対するしがらみがないため、顧客のニーズに応じて柔軟に対応することができ、ハードウェアの選定やシステム開発をおこなえるという強みがあります。
独立型の場合にはエンジニアとしてさまざまな業務を経験することができるため、スキルアップを考えている方の場合にはおすすめのSierとなります。
しかしながらSierによっては3次請け、4次請けなどの業界の立ち位置になっている企業が多いため、上流工程の作業を担当できないケースも多いです。
3つのSierの違いを簡単にご紹介してきましたが、3つの種別なくSierの特徴は下記の2つが挙げられます。
Sierの特徴
1.規模の大きなプロジェクトに参画できる
エンジニアとして勤務をしていても、国レベルや大企業のプロジェクトに参画できるケースは非常にまれです。
しかしながらSierに所属することによってそうした大規模なプロジェクトに参画する可能性が高まるのは事実です。
大規模なプロジェクトになればなるほど、担当する分野を細分化して複数の企業へ依頼することになるため、一部分ではありますがこうした大規模なプロジェクトに参画する可能性があることはSierならではの特徴の1つであるといえます。
2.プログラミング以外のスキルも身に付けることができる
プログラミングやITのスキルを身に付けることができるのはもちろんのこと、クライアントとやり取りする機会がSESと比較して多くあるのもSierならではの特徴です。
クライアントとの打合せや要件定義、保守運用までサポートすることになるため、エンジニアリングに関わらずエンジニアとして必要なヒアリング力や要件定義力も身に付けることができます。
結果としてコミュニケーションスキルが磨きやすい働き方になるため、業務を通じてコミュニケーションスキルを向上していくことができるのはエンジニアに関わらずビジネスマンとしてプラスに働くことが多いでしょう。
SESとSierの違い
ここまでは簡単にSESとSierの違いについてご紹介してきましたが、それぞれの違いをわかりやすく表にまとめると下記のようになります。
項目 | SES | Sier |
---|---|---|
報酬の対象 | エンジニアの労働時間 | システムやアプリケーションなどの成果物 |
業務範囲 | プロジェクトごとに異なる | 上流工程から運用保守まで幅広い |
求められるスキルレベル | 低い | 高い |
契約方法 | SES契約 | 請負契約 |
利益が上がるタイミング | エンジニアの契約ごと | システムやアプリケーションなどの成果物の納品ごと |
SESとSierの将来性の違い
SESとSierの違いをご説明したところで、実際にはSESとSierのどちらの将来性が明るいのでしょうか?
IT業界は今後、人材不足になるとされているためどちらの将来性も明るそうだと考えている方が多いのではないでしょうか?
ここではそれぞれの将来性についてわかりやすく解説していきます。
SESの将来性
SESの将来性は明るいといえます。
今後はますますIT人材が不足してきており、多くの企業がエンジニアなどのITワーカー探しに力を入れてくることが予想できます。
しかしながら採用・教育にはコストがかかってしまうため、思うようなエンジニアを集めることができない企業も増加しています。
結果として、SES企業と契約して、コストをかけずに自社のニーズにかなう即戦力のエンジニアと契約する企業も増加してくることが予想できます。
エンジニアとして自身のスキルや経験に自信がある方の場合にはSESエンジニアとして勤務してみることもおすすめします。
また、エンジニア目線から考えてみてもSESは求められるスキルレベルがそこまで高くないため、未経験の方であっても挑戦しやすい特徴があります。
そしてプロジェクトごとにさまざまな業種、プログラミング言語を経験することができるため、キャリアアップやスキルアップも期待することができます。
しかしながら入社するSES企業によってはブラックな環境で働かされてしまうことも多いため、SES企業を選ぶ際にはエンジニアを大切にしてくれる企業かどうかをしっかりと見極める必要もあります。
Sierの将来性
Sierの将来性はケースバイケースであるといえます。
現代ではAIやビッグデータを活用してビジネス課題を解決しようとしている企業が増加しています。
目まぐるしく進歩している技術革新の波に乗り切れていないSierの場合には取り残されてしまうケースもあります。
Sierは全てを自社で請け負うため、どうしても安定志向が高いケースが多く、新しいものをなかなか取り入れにくい傾向があります。
またクラウドを活用する企業が増えている中で、Sierに頼んで高額な費用を支払って開発等を依頼するよりも、既存のクラウドシステムを導入する企業が増えているのも事実です。
Sierの場合、自社がどのような強みを持っているのかが明確にできていない企業の場合には今後の将来性は明るくないといえるでしょう。
反対に新しい技術をどんどんと取り入れ、他社と比較して強みを全面に押し出せるSierの場合には今後の将来性は明るいといえるでしょう。
結局SESとSierはどっちがいい?
では結局のところ、SESとSierのどちらを選べばいいのでしょうか?
それは働く側がどんなことを経験したいか、スキルアップしたいかによって変化します。
例えば、エンジニアやプログラマーとしてのプログラミングスキルを磨きたい場合にはSESを選ぶ方が、現場でプログラミングをする機会もたくさんあり、幅広いプログラミング言語を利用して仕事をすることができます。
反対に要件定義などの上流工程側の作業を担当したい場合にはSierに入って経験を積むことでエンジニアとしてステップアップすることができるでしょう。
結論として、システムやアプリケーションの開発の一部分だけを経験したい場合にはSESを、システムやアプリケーションの開発工程全体を経験したい場合にはSierを選ぶことをおすすめします。
SESとSierの違いまとめ
今回はSESとSierの違いについて、そもそもSESとは、Sierとはという基本的な内容から、SESとSierの違い、それぞれの将来性についてご紹介しました。
同じような言葉ですが実際は似て非なる働き方であることがご理解いただけたのではないでしょうか?
SESはプログラミングを主にやりたい方に、Sierはシステム開発全体の工程を経験したい方におすすめです。
IT人材は今後も不足していくことが予想されていますので、この記事を参考に自分はSES、Sierのどちらが合っているのかを検討していただく機会になれば幸いです。